玉小櫛補遺 表紙
鈴木朖 玉小櫛補遺
平成14年6月10日 印刷
平成14年6月20日 発行
発行所 鈴木朖学会
前書より
鈴木朖著『源氏物語玉小櫛補遺』(上下二冊、文政四年刊)の影印と翻刻を刊行する。本書は、源氏物語の注釈として、特に本居宣長の『玉小櫛』との関連で有名であるが、「はなれや蔵板」であるためか、刊本は極めて少なく、現在では入手はすこぶる困難である。
ただし、明治以降、猪熊夏樹、有川武彦などによる『増註源氏物語湖月抄』の頭書に『玉小櫛』と共に各見出しの該当部分に増補されて、容易に見ることができ、便利なため、それによって引かれることが多かった。しかし、右の『増註』の使用は警戒を要する。
源氏物語 玉小櫛補遺 中表紙
項目を脱したり、全文ではなく一部を切り継いだりしたものがあるのである。これは元来、読解の参考としてあげられたためのもので、それはそれでよいかも知れないが、これのみに頼って、鈴木朖の説を論ずることは危険である。
本書はその書名から『玉小櫛』の単なる補遺のごとく見られるかもしれないが、全文を読めばそのような程度のものでないことが知られる。宣長の門人中で、名著『玉小櫛』に対して、正面から堂々と対したものは外にない。本書の研究が重要で、ここにとりあえずその全姿を示すことにした。
活字の飜文は、参考程度に添えたものである。校正に注意はしたが、誤りなしとは言い難いので、利用の際には影印本文によって確認していただくようおねがいする。
(尾崎)
所蔵する「玉小櫛補遺 上」の表紙
所蔵する「玉小櫛補遺 下」の表紙