本誌の名「文莫」の文字は、これを鈴木朖の筆なる扁額からとって、縦に置きかえたものである。この語は、『論語』述而篇の、「文莫吾猶人也」とある句中の「文莫」の二字を連語として解したことによるもので、その意味は、朖の著『論語参解』によれば、「黽勉ト同音ニテ、同シ詞ナリ、学問脩行ニ出精スル事也」という。あるいは彼の座右の銘ではなかったかと思われる。
目次
一、岡田本『活語断続譜』(言語四種論)
『言語音声考』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・杉戸 清彬
二、右影印復刻
三、岡田本「活語断続譜」と服部正義氏
「国語史上に於ける鈴木朖」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・尾崎 知光
四、国語学史上に於ける鈴木朖(再録)・・・・・・・・・・・・・・・服部 正義
鈴木朖の著書中「国語学の三部作」と呼ばれる『活語断続譜』『言語四種論』『雅語音声考』については、国語学史上、極めて重要な著作として、夙くから様々な検討が為されてきた。現存諸本の復刻も数多く行なわれている。そのような状況の中で、岡田本として従来も知られている一本をここに改めて影印に付する理由を一言だけ申し述べたい。
このたび、杉戸清彬氏にお願いして、岡田本「活語断続譜」の復刻と解説をしていただいたのは、鈴木朖の国語学の研究のためにまことに有難いことである。この書はすでに、昭和四十二年、鈴木朖顕彰会から発行された『鈴木朖』に影印があるが、完全なものではなく、しかも一部に作為が加えられたもので、厳密な研究の資料とするには不十分な点があった。
國語學史上に於ける鈴木朖・・・・・服部 正義(再録)