学会誌 文莫 第11号 (昭和61年7月発行)

文莫 第十一号 表紙

本誌の名「文莫」の文字は、これを鈴木朖の筆なる扁額からとって、縦に置きかえたものである。この語は、『論語』述而篇の、「文莫吾猶人也」とある句中の「文莫」の二字を連語として解したことによるもので、その意味は、朖の著『論語参解』によれば、「黽勉ト同音ニテ、同シ詞ナリ、学問脩行ニ出精スル事也」という。あるいは彼の座右の銘ではなかったかと思われる。

 

 

 

 

 

目次
一、鈴木朖の学問観とその背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・安藤 直太朗
  ─離屋学訓をめぐって─
二、柳園叢書一『言語四種論・活語断続譜』の刊年、その他について・・尾崎 知光
三、田中大秀『竹取翁物語解』の諸稿本とその書入・・・・・・・・・・竹内 千智
四、射和文庫蔵荒木田久守宛鈴木朖書状一通・・・・・・・・・・・・・杉戸 清彬
  ─影印と翻刻並びに紹介─
五、丹羽嘉言年譜稿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・清水 孝之
六、昭和六年度東大文学部に於ける橋本進吉博士の
  「国語学史概説」講義の鈴木朖・本居春庭に関する部分・・・・・・尾崎 知光

一、鈴木朖の学問観とその背景─離屋学訓をめぐって─
               ・・・・・安藤 直太朗

 本稿は鈴木朖の学問観の骨子をなす『離屋学訓』についての覚え書であるが、かって鈴木朖学会の席において述べた折の草稿が手許にあるので、それに若干の補訂を加えて発表することにした。もとより私は漢文学や国語学には専門的知識を持たない者であるが、郷土出身の彼の人と学問に対して少なからぬ興味をいだいて彼に関する資料を収集しており、その中にある『離屋学訓』を読んでいたので、それを紹介すると共に、その背景について考えた読後感と言ったものを臆面もなく加えたのである。

二、柳園叢書一『言語四種論・活語断続譜』の刊年、
        その他について・・・・・尾崎 知光

 柳園叢書一『言語四種論・活語断続譜』は、柳川春三の編で、鈴木朖の国語学上の名著たる右の二書はこれによって世にひろまった。『言語四種論』はこれよりさき、文政年間に刊行されたが、極小部数であったためか早くから得難く、明治大正の国語学史研究家は多く柳園叢書本を用ゐ、また『活語断続譜』は刊行せられなかったため、これまた柳園叢書本によってのみ知られ、その追補の内容に対する疑問から、時枝博士の研究が現れたことは有名なことである。

三、田中大秀『竹取翁物語解』の諸稿本とその書入
                ・・・・・竹内 千智

 田中大秀による『竹取翁物語解』は、その後の全ての『竹取物語』注釈の基礎であり、現在もその価値を失っていない。ところが、この『竹取翁物語解』の成立事情については、ほとんど研究がなされておらず、明らかでない点や、誤解のある点がたいへん多くある。本稿では『竹取翁物語解』の成立事情や大秀の古典研究の態度などを明らかにしてみたいと思う。

四、射和文庫蔵荒木田久守宛鈴木朖書状一通
    ─影印と翻刻並びに紹介─・・・・・杉戸 清彬

 射和文庫は、三重県松阪市射和町の旧家竹川家に伝わる文庫である。

その中に「反古帖」と総称される折本が五十二帖ある。ここに紹介する鈴木朖の書状も反古帖の一冊に貼り込まれていたものである。

書状は「先月廿四日御書拝見仕候」で始まる。日付けは「八月十一日」、宛名は「求馬様」、差出人は「鈴木朗」である。「求馬」は荒木田久守のことである。

五、丹羽嘉言年譜稿・・・・・清水孝之

1 本稿は昭和六十年六月、離屋会館において行った講演用資料として作製した「丹羽嘉言略年譜」を増補したものである。

2 急にまとめたので不備の点が多いが、鈴木朖学会の機関誌「文莫」に掲載したいとのご意向に添うべく、朖との関係事項にいささか留意して作製してみた。

5 本年は丹羽嘉言没後二百年に当る。鈴木朖・巣見来山・丹羽盤桓子・菅江真澄を育成した孤高の文人画家の研究が一層進展することを期待する。

六、昭和六年度東大文学部に於ける橋本進吉博士の
「国語学史概説」講義の鈴木朖・本居春庭に関する部分
                ・・・・・尾崎 知光

 私は「橋本進吉博士の『国語学史概説』の講義ノート」なる論文で、昭和六年度の講義の内容を紹介したが、今回その同じ資料によって、鈴木朖、本居春庭に関する部分を紹介したい。

 私の恩師の金子武雄先生のノートを譲りうけて、所持している。これは橋本博士の講義の内容を知る上での貴重な資料と考へられるのである。鈴木朖に関するものは、その「第七章宣長門下ノ語学研究」にみえる。

文莫第11号訂正(正誤)

文莫第12号に掲載されています。

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