本誌の名「文莫」の文字は、これを鈴木朖の筆なる扁額からとって、縦に置きかえたものである。この語は、『論語』述而篇の、「文莫吾猶人也」とある句中の「文莫」の二字を連語として解したことによるもので、その意味は、朖の著『論語参解』によれば、「黽勉ト同音ニテ、同シ詞ナリ、学問脩行ニ出精スル事也」という。あるいは彼の座右の銘ではなかったかと思われる。
目次
特別企画「国漢研究」第八六号複製
一、鈴木離屋翁年譜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・石田 元季
二、鈴木朖の生涯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・水野 清
三、神宮文庫本活語断続譜について・・・・・・・・・・・・・・・・・酒井 秀夫
四、鈴木朖について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・青木 辰治
五、鈴木朖自筆稿本自著刊本及手寫・書入本目録・・・・・・・・・・名古屋図書館
六、鈴木朖著作集(国語学の部)
一、言語四種論
二、活語断続譜
三、雅語音声考
鈴木朖没後百年を記念して、追善の意を以って企画刊行
鈴木朖死して百年、久しく埋沒してあらはれなかつたその業蹟は、近時斯道碩學の研究によって漸く顯彰せられ、國語學史上重要なる分野を占めるやうになった。これ實に學界の慶事であると共に、叉彼をして地下に瞑せしめるに足る事と信ずる。
今や百年祭に際し、本會亦追善の一微意を表する爲、こゝに特輯號を編んで、廣く研究家の寄稿を乞ひ、叉彼の偉業の片鱗を示すべき著述數種を飜刻して、これを學界におくる事とした。
昭和十一年六月中旬 名古屋國文學會 國漢研究主幹 岡田 稔